出向で事業会社の悩みを解決!?「広告運用の専門家不在」を解消するアノマリーな取り組み事例

出向中の写真

アノマリーマーケティング株式会社、代表の小田です!

「広告運用を語れる人が社内にいない」
これは多くの事業会社が抱える深刻な悩みです。

弊社が支援していたKTCグループ 株式会社ヒトトコLabo様(以下ヒトトコLabo)も同じような悩みを抱えていました。
そこでこの悩みを解決するために、KTCグループのマーケティング担当2名が2025年1~3月の3ヶ月間、弊社へ出向してきていただきました。

今回はどのような経緯で出向することになったのか、出向する中で行った内容、得られた気付きなどを紹介します。

弊社も初めての試みでしたが、終えてみて面白い取り組みになったと実感しておりますので、ぜひご覧ください!

出向の経緯 ――「専門家が社内にいない問題」をどう乗り越える?

ヒトトコLaboは、グループ内各社の Webマーケティングを一手に引き受ける“事業会社に近いインハウスエージェンシー”です。
しかし、様々なWebマーケティングの施策を行う中で、社内に「広告運用に長けた人がいない」といった悩みがありました。

Web広告の代理店(支援会社)であれば集まってくる情報が多いですし、広告運用の中で得意不得意があっても複数人で補える体制があります。
しかし、事業会社であれば1人でマーケティングを担っていることも少なくないですし、事業会社から派生した組織であるヒトトコLaboに関しても、同じ悩みを抱えていました。

業務委託で補っていた専門性。出向することで社内に知見が残りやすいのではないか?

そういった中で広告や解析・制作などに関しては外部のプロに業務委託・外部パートナーといった形で依頼して不足している部分を補っていたのですが、そうすると社内に知見が残らないことと、社内に詳しい人がいないことで全体のレベルもあがっていかないことが課題として挙がっていました。

業務委託や外部のパートナーと話をするにしても、社内での理解が乏しいと良い悪いの判断もできないですし、共通言語で話せないことで進行のスピード感やコミュニケーションの質も変わってきます。
その部分を解決することが喫緊のミッションでした。

そのような状況の中で、弊社がもともと外部パートナーとして運用支援を行っていたため、ヒトトコLaboから「出向するのはどうだろう?」といったご相談をいただき、「お互いのためになりそうですし、面白そうなのでやってみましょう!」といった話になったのが発端です。

なにより、やったことのないことはやってみないとわかりませし、どう転んだとしても得られるものは少なくないといった過去の経験も後押しして実現しました。

出向に関わったメンバー

教育担当

小田 峻|アノマリーマーケティング株式会社 代表取締役

出向者

高橋 章浩さん|KTCグループ マーケティング担当

橋本 佳孝さん|KTCグループ マーケティング担当

出向のゴール設定

今回の出向プログラムのゴールは以下のように設定しました。

ヒトトコLabo 側

  • 得たノウハウを社内に展開して、チーム全員がマーケティング思考を身に着けられるようにする
  • 広告運用のノウハウを学び、自社で最低限の運用ができるようにする
  • 代理店と対等にコミュニケーションを取れるようにする

出向期間は3カ月に設定していたため、これらのゴールを達成するために、以下の能力を身に着けることを目標として出向のプログラムを構築しました。

また今回の取り組みでは弊社側のゴールも設定しており、学ぶ側も教える側もどちらも得をする設計を目指して運用しました。

アノマリーマーケティング 側

  • 仕組み化:教える過程で、手順書やマニュアルを再整理して社内知識を型化する
  • 新しい視点の獲得:インハウス側の悩みや行動パターンを肌で感じて、サービス改善に生かす

出向プログラムの内容

高橋さんと橋本さんの出向プログラムでは、以下のようなカリキュラムを用意しました。
マーケティングの基礎から広告運用ノウハウ、実践的なクライアント対応まで、幅広いスキルを習得できるよう設計しています。

これらを伝えながら、実際に手を動かして身に着けていっていただくOJT形で進めました。

ここからは実際に高橋さんと橋本さんがどのようなことを学んだのか、1ケ月単位でご紹介させていただきます!

1カ月目

高橋さん

広告運用の基礎知識を習得することに注力しました。3C分析により市場・競合・顧客の理解を深め、特にユーザー心理の把握に力を入れました。また、広告管理画面の基本操作や専門用語を理解して、Google広告スキルショップの検索広告認定を取得しました。

橋本さん

商談から運用までの基礎研修に取り組み、3C分析を通じて配信媒体の選定と広告構成づくりを学びました。配信試算とプランニングの手法、Google広告のキャンペーン作成や基本設定を習得し、クライアント対応のポイントも学びました。

2カ月目

高橋さん

Google広告スキルショップのディスプレイ広告認定を取得して、実際に自社事業のディスプレイ広告設置に取り組みました。また、Meta広告のレクチャーを受け、自社アカウントで実際の広告設定も経験。広告運用に関する知見を文書化する作業も進めました。

橋本さん

Meta広告の設定方法を学び、自社アカウントの設定を行いました。Google広告では除外キーワードやカスタマイザ属性の設定、P-MAX配信の考え方などを習得。またオフライン勉強会に参加して交流をい行い、業界の知見を広げました。

3カ月目

高橋さん

社内施策の振り返りレポート作成に挑戦して、数値分析の目の付け所を学びました。また、広告運用のノウハウをまとめたマニュアル作成にも取り組みました。

橋本さん

日次チェックの方法を学び、予算・コンバージョン・コンバージョン単価を見て調整する手法を実践しました。サイト/LP改善の基本と、ABテストの実施方法も習得しました。月末には社内の全体会議に参加して、実際のレポート内容をもとにプレゼンテーションを行いました。

お互いの気づき

今回の出向を通して、高橋さん・橋本さんにどういった気づきがあったのかインタビューしました!

高橋さんの気づき

高橋さん

この3ヶ月間の出向を通じて、広告運用について一から学ばせていただきました。オフラインでのマーケティング経験しかなかった自分にとって、Webマーケティングの世界は驚きの連続でした。

最も印象的だったのは、「読んだ内容は理解したつもりでも、実際に触ってみないと疑問が出てこない」 ということです。理論と実践の間には思っている以上に大きなギャップがあり、Google広告の管理画面を実際に操作して初めて、キャンペーンや広告グループの階層関係が腹落ちしました。

広告運用で一番難しく感じたのは、数値をどう見て、どう改善につなげるかという思考プロセス でした。CPCが上がった時に「つまり何が起きているのか」「それがどこにどう影響するのか」を理解し、最適な改善施策を判断するには、まだまだ経験が必要だと感じています。

また、「何をどう変えたか」を機械的に記録するのではなく、「どういう傾向だったからどう修正を入れたのか」という全体の流れを理解することの重要性 を学びました。

この出向で学んだことを社内に持ち帰り、追うべき数字をシンプルで日々追いやすいものに改め、細かく素早くPDCAを回せる形 にすることが今後の目標です。

橋本さんの気づき

橋本さん

この3ヶ月間の出向を通じて、広告運用の基礎から実践まで幅広く学ばせていただきました。

最初は3C分析で「顧客の立場になって考える」ことの難しさを実感しましたが、オーディエンスの理解や訴求のつながりが見えてきて、点で理解していたことが線でつながるようになりました。特に印象的だったのは、広告運用において「消化」がNGワードであることなど、代理店側でのお金の考え方を学べたことです。

実際の案件を通じて、Google・Yahoo!・Meta広告の設定から日次チェック、改善提案まで一通り経験できました。PDCAを回すスキルが身につき、課題や気づきを発見して提案し行動に移せるようになりました
また、GTM設定やコンバージョン設定も、以前は真似して作成していた部分が、設定する意図を理解して実装できるようになりました。

最も重要だと感じたのはクライアントとのコミュニケーションです。小田さんがクライアントの会社や担当者に興味を持って接している姿勢がとても勉強になりました。広告運用だけでなく、いかにクライアントの売上・利益を上げるかを全体で考える思考が必要だと気づきました。

今後は情報収集の習慣化と、サイト・LPの理解をより深めていきたいと思います。

ヒトトコLaboの気づき

ヒトトコLabo 責任者様

今回社内で広告運用専門チームをつくることになりましたが、経験がないためどういった体制で運用するのか迷っていました。

そういった中で、出向させていただいて持ち帰ってきた予算の決め方や毎月の運用方法のすり合わせ方法、打ち合わせの方法など、代理店としての立ち回り方の多くが使えることがわかったことが収穫でした。
そのような部分を上手く反映させて、組織を強化していきたいと考えています。

また、今回Webマーケティングの経験が少ないメンバーで広告専門チームを作ったため、日々の運用はなんとか回っていましたが、マーケ視点での運用改善提案ができていないといった課題がありました。

そういった課題があった中で、出稿を通じて広告運用を軸としてマーケティング全体の考え方が身にについたことで、より効果的な提案がでてくるようになったと感じています。

小田の気づき

小田

今回の取り組みを通じて感じたことは、高橋さんも橋本さんも能動的に学ぼうといった姿勢を取っていただいていたので、飲み込みも身に着くスピードも速かったと感じました。
気になったことは細かく質問していただきながら進められたので、こちらが気づかされることも多かったですし、本人たちの理解度や疑問に思っていることが把握しやすくて進めやすかったです。

個人的にはWeb広告といった手段や管理画面上に限った話だけではなく、マーケティングの本質のような全体像の部分から伝えられるように意識していましたが、その辺りが少なからず伝わったように感じています。

また、正直に言うと経営と通常の業務と平行して行っていたので大変ではありましたが、おかげさまで社内の仕組み(マニュアルやテンプレート)のブラッシュアップも行えましたし、何より僕自身が人に伝えることで学びになることも多く、ありがたかったですね。

当初設定していたゴールを考えるとこれから継続して取り組んでいく必要がある部分も多いのですが、半分程度は達成できたのではないでしょうか。
大切な社員を預けていただいてありがとうございました!

まとめ

今回の出向はお互いにとって初の試みでしたが、ヒトトコLaboとしての満足度も高く、弊社としても学びが多い有意義な時間となりました。

ヒトトコLaboはインハウスエージェンシーですが、事業会社としては支援会社のリアルや正しい広告運用の知識を知る機会になると思いますし、支援会社としては事業会社のリアルな悩みに触れるいい機会だったと感じています。

今回の取り組みは正式なサービスではないため特殊なケースであったことと、本当に大変だったため、改めて行うかと問われると尻込みしてしまいますが、弊社はサービスとしてインハウス広告運用の支援なども行っておりますので、その辺りでお悩みのかたはフランクにご相談いただければと思います!

高橋さん、橋本さん、そして株式会社ヒトトコLabo様、ありがとうございました!